桃心会




金春康之が主宰する、お稽古をする人たちの集まりの会を「桃心会」といいます。
この名前について、発会の集いで配られたしおりに、つぎのように書いています。

もものこころ、ってなんだろう、とお思いのみなさまにひとこと。
かつて大伴家持は、「春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に出で立つ乙女」とうたいました。
桃の花に照り映えて桃色の光が降りそそいでいる道に、若々しく匂うような乙女が立っている情景は、優美で生命感に満ちています。
また、紀元前五世紀頃の人類最古の文学に属する中国の詩経に『桃夭』という詩があります。

  「桃之夭夭 灼灼其華 之子于歸 宜其室家 
   桃之夭夭 有賁其實 之子于歸 宜其家室
   桃之夭夭 其葉蓁蓁 之子于歸 宜其家人」

というふうに、嫁いでゆく若い娘を若々しい桃になぞらえてうたっています。
桃と乙女は、みずみずしい美しさという点で結ばれているのでしょう。
芸術、ことに能という舞台芸術の根底には、こうした美しさがなければならないと私は思っています。
さらにまた、世阿弥の残した『花鏡』という伝書の中に「声よく、舞・はたらき足りぬれ共、名人にならぬシテあり。声悪く、二曲さのみの達者になけれども、上手の覚え天下にあるもあり。これすなはち、舞・はたらきはわざ也。主に成る物は心なり。」というところがあります。
能の本質をよくわきまえて、「心」によって演じること、これを目標にしてゆきたいと思います。
「桃」と「心」はこうして結びつけられましたが、新しく生まれた「桃心」ということばは、「桃」でもなく「心」でもないものとなり、えもいわれぬ美しい世界への扉を開いているように思われないでしょうか。


 *「桃心会」は、年に2〜3回、謡・仕舞発表会を行っています。

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